秋渓菊萩芒葛家文様「菊慈童帷子」 江戸後期文化文政(1804〜1829)
古代中国魏と呼ばれた国の文帝の頃郷縣渓谷山の麓から霊水が流れ出るというので勅使が源を尋ねるべくその山に赴きます勅使の一行は菊の花の咲き乱れた山中の庵に一人の不思議な少年を見つけ「人間の住まぬこの山奥にいるお前は化生の者か」と尋ねると「あなたこそ化生の者でしょう私は周の王に仕えていた侍童です」と答えます 勅使は「周というのはもう数代も前の世だ」と驚きます 話を聞くと彼は王に召し使われていたがあやまって王の枕をまたぎその罰でこの山に配流されましたが少年に悪意のないことと知った王はその枕に二句の喝「仏徳を讃えた詩」を書いて与えました その文字を菊の葉の上に移し書くとその葉の露が霊薬となりそれを飲んでいた為に少年は七百年後まで若々しく生きながらえていたのです 慈童自身も自分の長命に驚き楽しく舞をまったあと寿命を君に捧げそのまま山中の仙家へと帰って行きます 文様としては格調も高く墨を含んだ筆で菊の葉に文字を移しとったものと思われます 又硯は王朝以来絵画において秋を表現する景物でありますいずれ教養豊かな大名の息女の夏の衣装と思われます 白木染匠資料室所蔵