秋草虫籠茶屋染小袖 江戸中期
この小袖は「源氏物語」の野分きの一巻を表現した教養と文学趣味あふれる一領で御座居ます 八月の或る日源氏の六条院でも幾練かの御殿が倒れる程の野分きが吹き荒れ源氏は長男夕霧に秋吉中宮を見舞わせる そこでは野分きで秋草の乱れ伏した庭に女の童達をおろさせてここかしこの草むらに色々の虫籠を持ち歩き露をかわせていらっしゃる それが霞にかすんで桔梗萩菊女郎花などの秋草に虫の音をそえた風情がうかがわれる 文様は楊子糊で置かれたものか茶屋染の技法で藍濃淡挿しで誠に見事であります 
白木染匠資料室所蔵