藍鼠地 業平東下り図 江戸時代後期「文化文政期」
この小袖は「伊勢物語」の在原業平下りを表現した教養と文学趣味溢れる一領で御座居ます。武家の奥方か上褐が着用されたものと思われます。右袖に白雪を頂いた富士山を、浜辺には松原や網干に戯れる磯千鳥や、風に靡く芦をあしらい、のどかな磯風景を表現し、白馬に跨がる業平公が富士を仰ぎ見る様子や、馬の手綱を持つ家来の表情や太刀を持つ童子の姿にもこの一行の気品と着装者の教養を偲ばせてくれる非常に珍しい一領です。永年に亘りアメリカに渡っていたが近年我国に里帰りして来たものであります。
白木染匠資料室所蔵