ここに示された製作工程は基本技術工程であり、この他応用技術も併せて行われます。

@ 企画考案

 美しい京友禅に仕上げるためには、染匠たちが頭の中で画(エガ)き出したイメージを具体的に表現する必要があります。そのために、美術工芸品などのあらゆる資料をもとに、模様と色彩の配置、バランスを考え、意匠図案を考案します。そしてその衣裳と品種に適した生地の選択をします。

Aゆのし

 生地の長さや幅を整えるために蒸気で生地を伸ばします。ゆのしは、下のし・中のし・上げのしと、工程途中に3回行いますが、生地のシワを伸ばすだけでなく、発色を促し、光沢を与える作用もあります。

B検尺(ケンジャク)・墨打〈スミウ〉ち

 キモノの袖・身頃・衽など各部分を割り振りするため、それぞれの長さを計り、生地に墨でしるしをつけます。

C仮絵羽仕立て(下絵羽)

 キモノの形に縫い上げることによって、染め上がりの時に縫い目で柄がずれないように、寸法通り仮縫いします。

D下絵

 意匠図案にもとづいて、仮絵羽された白生地に、青花液で模様を描いていきます。はじめはうすい青花で、アウトラインを描き、次第に濃くして正確な模様に近づけます。

 ※ 下絵が終われば、仮絵羽をほどき、各部分に分けて模様がゆがまないように竹の伸子〈シンシ〉で生地をピンと張ってから、次の糊置を行ないます。

E糊置(ゴム糸目)

 下絵の線に沿っていとめ糊を置いていきます。これは、挿友禅の際、染料が他ににじまないように防染する働きがあります。

F伏糊

 糸目糊でかこんだ後、挿友禅をする模様の部分に糊をムラなく置いていき、その上に挽粉〈ヒキコ〉をふりかけます。これは引染をする時、模様の部分が染まらないように防染する働きをします。

G引染(地染め)

 別の布切れで試染〈タメシゾメ〉し、色合わせした染料を刷毛でムラの出ないように染めていきます。濃い色は2〜3度重ねて染め上げます。

H蒸し

 引染の終わった生地を蒸し箱に入れ、地色を定着させるために約100度の蒸気で20〜50分間蒸します。濃い地色のものは何度も繰り返し行ないます。

I水元〈ミズモト〉(水洗い)

 蒸し上がった生地は、良質の水をたっぷり使ってきれいに洗い流します。これで余分な染料や伏糊を洗い落とす働きをします。

J挿友禅〈サシユウゼン〉

 色々な筆と刷毛を駆使〈クシ〉して糸目防染された模様のところに色を挿していきます。薄い色から濃い色へ、順に進めていきますが、刷毛の扱い方しだいでぼかし模様なども染められます。

※ 挿友禅の後、蒸し・揮発水洗・水元・ゆのし(中のし)を行なった後に、最終加工に入ります

K金彩

 金・銀の箔や粉を使い、豪華な雰囲気を作ります。金〈キン〉くくりや押し箔・摺箔〈スリハク〉・砂子などの技術で京友禅ならではの美しさを表現します。

L刺繍

 絹糸・金糸・銀糸を使って、駒使い・菅・相良〈サガラ〉・纏〈マツ〉い・平繍などの刺繍技法で模様に気品と華やかさ、ボリューム感を持たせます。京友禅にふさわしい華麗なキモノに仕上げます。

M仮絵羽仕立て(上げ絵羽)

加工がすべて終了すれば、ゆのし(上げのし)、地直しをして一通り完了です。その後採寸に応じて縫い上げます。この縫い上げられた状態のものを上げ絵羽と呼びます。美しい京友禅の出来上がりです。